SIM道場スペシャル

「MWC19 Barcelona」でIIJが語るeSIMや5Gへの期待

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 2月25日から28日に渡って開催されたMWC19 Barcelonaでは、商用化するスマホが多数発表されたこともあり、5Gが例年以上に注目を集めていました。一方で、格安SIMやMVNOの視点では、IIJが同イベントに初出展したことも見逃せないポイント。フルMVNOとして独自のSIMカードを発行し始めた結果、海外事業者との連携が重要になっているというのが出展の理由。香港の事業者が提供するAIRsimのように、すでにIIJのプロファイルを利用している事業者もありますが、こうしたビジネスを加速させる狙いがあります。

 また、IIJは、eSIMに関しても、この夏にサービスを開始する予定です。MWCには、フランスのTransatelや、アメリカのTelnaのように、eSIMのサービスを提供する事業者が出展していましたが、これも同イベントの主要なテーマの1つ。IIJもそこに名乗りを上げるというわけです。MWCでは、同社のMVNO事業を統括するMVNO事業部長の矢吹重雄氏とMVNOセールス・プロモーション部 事業統括室 担当部長の佐々木太志氏が、日本の報道陣の取材にこたえました。ここでは、その一問一答を掲載していきます。

MWCに初出展したIIJ

eSIMは夏前にサービスイン、勝算は?

――MWCで、海外キャリアとはどのような話をしているのでしょうか。

矢吹氏
 積極的に話をしているのは、SIMカードのプロファイルで、これを売りたい、買いたいという話が多いですね。いくつか重要なビジネスが進みそうです。

 すでに売っているのは、中国の会社が中心で3社あります。香港の事業者を中心に大きいお話をしているのと、欧州系のMVNOとも具体的にお話をしています。

取材に応じる矢吹氏

――eSIMに関してはいかがですか。

矢吹氏
 eSIMは利便性が高く、合理的なものですが、まず国内で出す予定です。ただし、まだ色々な問題もあります。契約の仕方やインターフェイスをどうするのか、期限切れの管理をどうすべきかという問題もあります。そのため、まずはβ版で出し、ユーザーに使っていただいて磨きをかけていくということを考えています。夏前にはeSIMのサービスを出したいですね。当初はβ版なので、料金設定も今やっているIIJmioよりリーズナブルにして、お客様の反応を見たいと思っています。

 商売として考えると、eSIMはまだまだ端末が限定的です。ここで商売っ気を出すよりも、技術を洗練させていきたい。海外展開に関しては、代理店の方からも販売したいというお話は来ていますが、「eSIMの代理販売はどうやるんだろう?」という疑問もあり、そこまでは頭が回っていません。

――MWCでは、eSIMを出展している事業者もありましたが、これらを見てどのような印象をお持ちでしょうか。

佐々木氏
 端末の問題は全世界共通で、やはりiPhone XS、XRがサプライズでした。その瞬間から色めき立ったという意味では、スタートラインは変わらないと思っています。ただし、(IIJは)フルMVNOがまだ1年目だったので、すぐには対応できませんでした。実際、欧州ではすでに基盤を持ち、プロビジョニングプラットフォームをお持ちだったところがクイックに走り始めていて、その点で有利な立場にいたと見ています。フルMVNOを始めた年に起きたイベントだったので、リソースの問題もあり、忸怩たる思いはあります。

eSIMは実験に成功済み。ビジネス化は夏前を予定する

MVNOと5Gの関係はどうなる?

――MWCでは、5Gの話題のオンパレードでしたが、MVNOの立場でこれをどう見ているのでしょうか。すぐに回線を卸してもらえるのでしょうか。

矢吹氏
 まずはそこが大きいと思っています。あとは、SA(スタンド・アローン=5Gを単独で動かすモードで、低遅延や多端末接続に必要)と呼ばれているものがどうなるかですね。NSA(ノン・スタンド・アローン=LTEで制御しながら、データ通信にのみ5Gを使うモード)時代の5GをMVNOに卸してもらっても、画期的に変わるかというとそうではなく、スピードが変わるぐらいです。その意味で、SAにいつなるのかが興味深いところです。

――キャリアとは、すでに話がついているのでしょうか。

佐々木氏
 まだまだこれからです。キャリアも最初に出すのは、自分たちのサービスになるのではないでしょうか。LTEも最初はオープンにしていませんでした。大体、1年半から2年ぐらいはタイムラグがあり、それを不公正というつもりもありません。

 反面、NSAの5Gだと、僕らから見たとき、(LTEなのか5Gなのかは)区別がつかない可能性もあり、端末があればある日突然つながるというパターンもあります。実際、カテゴリー1のLTEは突然使えるようになりました。無線のところにどんなプロトコルを使っているかは、基地局と端末の関係に過ぎないからです。ただし、今の段階では、どのシナリオになるかは分かりません。また、SAになったときにも、専用のネットワークを作る必要が出てきます。

会場の至るところに、5Gの文字が躍っていた

国内ビジネスやマルチキャリア化の意義

――IIJはau回線もやられていますが、マルチキャリアMVNOの必要性はどう考えていますか。

矢吹氏
 LINEさんがマルチキャリアをやり始めますが、個人的にはあまりマルチキャリアの必要性が……どちらかというと、ビジネス用(MVNE用)に必要だと思っています。コンシューマー向けにどこまで必要なのかは、ちょっと分かりません。もっとSIMロックを自由に解除できるようになれば、どこでも構わなくなりますからね。Androidの端末も、ミドルレンジやローエンドが入ってきて、買い替えの障壁は昔ほどではなくなっています。

佐々木氏
 マルチキャリアMVNO(になるかどうかは)は、ビジネスの戦略性の問題だと思っています。たとえばあるキャリアが接続料を上げると言い出したとき、もう一方に乗り換えることができる。逆にシングルキャリアMVNOだと、MNOと親密にビジネスをやっていけるメリットがあります。

 ただし、日本の場合、SIMカードを取り替えなければいけなくなるので、そこがワークするかというと難しいですね。シングルキャリアで接続料を下げてよといっても、公正性の問題になってしまいます。

――楽天の三木谷(浩史 会長兼社長)が「MVNOはキャリアの奴隷だ」という発言をしていましたが、IIJ的にはいかがでしょうか。

矢吹氏
 MVNOは政策的に育てていただいている立場で、奴隷というのはちょっと……フルMVNOになったことで、自由度はかなり上がったと思っています。奴隷ではなく、チャレンジャーになり、新しい権利を得たと思っています。

佐々木氏
 サブブランドも、MVNOが出てきたことで、キャリアが対応せざるをえなくなり出てきたものです。仮に奴隷だったら、僕らの顔色を見てキャリアが戦略を変えるようなことはありません。それだけの影響力は現に持っていますし、自分たちの武器は磨いています。

MVNOからMNOへと鞍替えする楽天。MWCでの展示や基調講演も話題を集めた
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