SIM道場スペシャル

教えて堂前さん! 格安SIMのソボクな疑問をIIJに聞いた(後編)

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知っているようで、意外と知らない「格安SIM」「格安スマホ」のソボクな疑問。答えてくれたのは、MVNOに関する技術の解説に定評のある、IIJの技術広報担当、堂前清隆さんです。

前回は前編として、基本中の基本を伺っていきましたが、今回はその後編。

MVNOのちょっと深い部分まで、突っ込んで聞いてみました!

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――前回、キャリアアグリゲーションは大手キャリア(MNO)が始めると、自動的にMVNOでも利用できるというお話を伺いました。それと似た話ですが、auのMVNOでは、WiMAX 2+まで使えるようになっています。ただ、WiMAX 2+はあくまでauのものではなく、運用しているのはUQコミュニケーションズです。IIJさんもau回線のサービスを提供していますが、これはそれぞれ個別に借りているのでしょうか。

堂前

いえ。auさんだけから借りています。UQコミュニケーションズさんとauさんの間では、RANシェアリングという技術が使われています。これは、下図の「LTEの網」となっている部分で、基地局をお互いにシェアする仕組みのことで、MVNO側にはauのネットワークとして見えます。
ですから、IIJもauと接続していますが、接続先の相手は1つだけとなります。

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図版出典:IIJ

 

――現状、au回線用のSIMフリー端末は非常に種類が限られています。この理由を改めて教えてください。

堂前

理由の1つは、今までだと需要がなかったということだと思います。auさんも今はLTEのみの端末を出していますが、それまでは音声通話のために、CDMA2000 1xに対応しなければいけないという事情がありました。

ただ、残念ながらCDMA2000 1xという規格は比較的マイナーで、かつその端末が日本でしか売れないとなると、発売されることが少なくなってしまうのだと思います。

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図版出典:IIJ

 

――au回線のMVNOの場合、音声通話だけにCDMA2000 1xを使うという借り方をしています。それと近い形で、ドコモで3Gだけ、またはLTEだけという形で借りることもできるのでしょうか。

堂前

実はそれもできるんです。下図のように、今でも3Gの接続とLTEの接続は、ネットワーク内で分離しています。そのため、実際にどちらかだけ借りるということもできます。

以前、一部のMVNO事業者で3G専用端末がつながらないということがありましたが、それも片方だけを借りていたからです。

3G専用の設備だと「SGSN」「GGSN」という設備を通りますが、LTE契約に対応した端末だと「SGW」「PGW」を通ります。

そのGGSNを持っていないMVNOの場合、3G専用端末がそちらにつなぎにいこうとして、弾かれてしまうのです。

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図版出典:IIJ

 

――その端末が接続する際に必要な「APN」という値があります。質問が一気に基本に戻ってしまいますがこれについて、改めてどういうものなのか教えてください。

堂前

APNは「アクセス・ポイント・ネーム」の略です。インターネットにダイヤルアップ接続していた方は覚えているかもしれませんが、あの時もたくさんのプロバイダーがあり、間にNTTの電話網が入って、電話番号でどこに接続するのかを決めていました。

複数のプロバイダーがあるとき、どこにつなぐのかを指示するのがAPNの役割です。

ちなみに、IIJは1つの事業者ですが、法人向け、個人向けで、いくつか仕様の違うAPNを出しています。

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――つまり、APNによって、料金やサービスの内容を変えることができるということですね。

堂前

その通りです。

 

――ちなみに、APNにIDとパスワードを入れることはマストなのでしょうか。海外だと、なしでそのまま通信できるところが多い印象があります。

堂前

実はなしにしてもいいのですが、IDやパスワードは、ユーザーそれぞれの識別をそれでしていたころの名残です。

最初は、ユーザー1人1人にIDとパスワードを発行して、それを使って管理をしていました。

最近では、IMSIという回線に固有かつユニークな番号で識別ができるようになったため、なしにする事業者もいます。

ただし、企業向け固定IPサービスなど、セキュリティ上SIMカード以外の認証方法が要求されているサービスでは、ユニークなアカウントとパスワードの組での認証を実装しています。

 

――通信サービスのお話になった流れで伺いますが、IIJmioではバースト転送という仕組みを導入しています。なぜ、速度制限されているときでも、一瞬だけ高速に通信ができるのでしょうか。

堂前

バースト転送は、帯域制御と呼ばれているものの1つです。

まず、IIJ側には、お客様からたくさんの通信がいっぺんに送られてきます。インターネットは、基本的に途中であきらめず、送られてきたデータは全力で送る仕組みです。

全力でサーバーに向かってデータを投げてくるわけですね。ですから、誰かが途中に入って止めることが必要になります。これが帯域制御で、やり方は色々なものがあります。

 

バースト転送は、その中の1つで、データが流れ込んできたときに、ちょっとの間だけは全力で通し、こぼれた部分は遅くするというものです。

クーポンをオフにして、速度を200Kbpsにした場合、通信を始めてからちょっとの間だけは、速度制限をしていないのです。

これによって何がうれしいかというと、Webを見る場合は、最初にHTMLがガツンとまとめて送られてきます。次のデータが送られるまでの間は速度が制限されますが、その間にブラウザがHTMLやCSSといったデータの解釈をする。それが終わったタイミングで、またデータがガンと送られます。このタイミングが合うと、速度制限がほとんどかかっていないのと同じような状態で、サッとサイトが表示されることになります。

また、Twitterのような軽いデータは、バースト転送の間だけですべて読み込めてしまうため、体感的に遅いと感じることが少なくなるのがメリットです。

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図版出典:IIJ

 

――IIJ的には、そこでデータの速度を緩めてしまうと、ユーザーに帯域を使われすぎてしまうというデメリットはないのでしょうか。逆に言うと、速度制限のメリットとはどこにあるのでしょうか。

堂前

あくまで計算上はですが、データ量は通信速度と時間の掛け算で、ダラダラ使われると同じデータ量になってしまいます。

逆に話で、よくバースト転送をすると設備に影響があるのではと聞かれますが、総計の通信量は一緒です。

なので、バースト転送をしようがしまいが、相対的にはそこまでの影響がないというのが答えになります。

 

――では、データの量にまったく制限を設けないと、どうなってしまうのでしょうか。

堂前

よく2:8や1:9と言われている現象がありますが、特定の方が本当にたくさんのトラフィックを使う傾向があり、何らかのキャップをかけないとそれが発生してしまいます。

1つの方法としてあるのが、月に何GBという形で制限を入れることです。会社によっては、1日に何MBという形で制限をしているところもあります。

 

――上限のないデータ通信使い放題のプランが難しいのは、そういうことが理由というわけですね。

堂前

我々はやらないと言っていますが、経済的な根拠で言えば、どれだけドコモ(MNO)さんから帯域を仕入れて、何人の方に提供するかの帳尻が合えばできないことはありません。

ただ、定額である程度の速度まで保証しようとすると、とてもではないが個人の方にご請求できる金額ではなくなってしまいます。

その制限を上限の速度で決めている会社もあれば、制御せずに自然と落としどころを決めている会社もあるというのが、現状になるのだと思います。

 

――本日はありがとうございました。

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