SIM道場スペシャル

教えて堂前さん! 格安SIMのソボクな疑問をIIJに聞いた(前編)

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「格安SIM」や「格安スマホ」とも呼ばれ、一般の生活にも浸透してきたMVNOですが、やはりその仕組みは簡単ではありません。そもそもMVNOとは一体、どのような会社で、なぜ料金を安くできるのでしょうか。また、同じドコモ回線を使っていながら、速度が会社によってまちまちということを、不思議に思う方もいるかもしれません。

そんなMVNOの“中の人”として、積極的に情報を発信しているのが、インターネットイニシアティブ(IIJ)の技術広報担当、堂前清隆氏。IIJmioの技術的なトピックを、分かりやすく解説する「てくろぐ」の中の人としても有名です。そんな堂前さんに、MVNOの素朴な疑問をぶつけてみました!

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MVNOってそもそも何? なぜ会社によって料金が違うの?

――最初に、MVNOとは何なのか。ここから、改めて解説していただけないでしょうか。

堂前
技術的なお話をする前に、制度のお話をした方がおもしろいと思います。今MVNOが注目されていて、総務省の統計だと1000万など景気のいい数字が出ているのはご存知だと思いますが、実際にはMVNOといっても、いくつかの形態に分かれています。1つがMNO(回線を貸し出す側のキャリア)によるMVNO。KDDIさんとUQコミュニケーションズさんや、ソフトバンクさんとWireless City Planningさんのように、既存の通信会社同士がお互いに回線を貸し合っているところも、MVNOになります。

2つ目が再販型です。電気通信事業者の主体ではありますが、実際に設備を持たず、キャリアから借りたものをほぼ再販するのに近い形で打っているところです。家電量販店などで売られているルーターなどが、この形ですね。

3つ目としてようやく出てくるのが、独自サービスをやっているところで、ここが今一番注目されているMVNOです。ビジネス用途や自販機に入れられるものもありますが、いわゆる「格安SIM」と呼ばれるものも、ここに含まれます。

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図版出典:IIJ

――独自サービス型についても、色々な会社がありますね。

堂前
はい。ザックリ言うと、3つぐらいに分かれます。1つ目が、IIJで言うと、IIJが直接販売しているIIJmioのSIMカードです。2つ目が「BIC SIM」のような形のものです。ビックカメラさんでは「BIC SIM」を販売していますが、こちらは契約先がIIJになっていて、ブランドとWi-Fiなどの特典が販売店さんのものになっています。3つ目として、IIJがMVNOという形で設備を借り、これを別の事業者に貸し出すものがあります。この場合、事業の主体はIIJが貸し出した先になり、ユーザーさんもその事業者と直接契約を結びます。この場合のIIJは、MVNOを支援する「MVNE」という形になります。
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図版出典:IIJ

――MVNOが設備を持っているというお話がありましたが、実際どのようなところを借り、どのようなところがMVNOのものなのでしょうか。

堂前
ドコモさん(MNO)のネットワークは、3GとLTEの2つに設備が分かれていて、それぞれに対してアンテナや基地局があり、交換機が2段階あり、そこからインターネットや電話網に抜けるようになっています(下図参照)。アンテナと一段目の交換機はキャリアさんのもの、二段目の交換機を持っているのが、今のMVNOです。この二段目の交換機があることで、MVNO独自の認証や課金、通信速度の制御が可能になります。たとえば、今3GBで900円というお金を頂戴していますが、それをつかさどっているわけです。速度制御をしたり、各ユーザーさんが持っている3GBを減らしていったりといったことをしているのです。

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図版出典:IIJ

販売代理店とMVNOが違うのは、この二段目の交換機を持っているところです。これがあるから、お客様に独自の料金やサービスを提供できるということですね。

通話料が各社同じなのはなぜ?

――なるほど。ただ、これは、データ通信のことですよね。電話の仕組みは別と考えてよろしいのでしょうか。

堂前
はい。あくまで、電話の設備はキャリアさん(MNO)のものであって、MVNO側に設備はありません。法律の対応問題や、設備開放の都合など、色々な話があって、今のところはそのようになっています。結果として何が起こっているかというと、今のMVNOの音声通話サービスは、キャリアさん(MNO)のものをそのまま使っていて、請求書だけを回してもらっているような形になっています。

――料金が大手キャリアと同じ30秒20円というのも、そのためなんですね。

堂前
結局のところ、MNOからMVNOへの卸売り価格が同じなので、どこの会社でも大きな違いはありません。

エリアはドコモ(MNO)と同じ? MVNOごとに通信速度が異なる理由は?

――一方で、データ通信は料金も違いますが、通信速度も異なります。

堂前
MVNOのビジネスモデルは、MNOとMVNOをつなぐ回線をどれだけお借りし、そこにどれだけのユーザーを入れるかというところに行き着きます。ドコモさん、auさんと接続するネットワークは、その通信回線の値段ではなく、全国にあるアンテナや交換機設備の総コストを案分したものです。ですから、ここの接続料は非常に高価になります。ですから、ここをたくさん借りるのは、難しいのです。ただ、この部分を狭くして、たくさんの人を詰め込んでしまうとスピードが出ません。

――エリアについては、いかがでしょうか。各社ドコモと同じとアピールしているところが多いようですが。

堂前
完全に同じです。ただし、周波数の問題があります。ネットワーク側の設備としては、エリアはまったく同じになりますが、端末が特定の周波数に対応していないようなことがあると、一部の場所ではつながらないというケースもあります。

――その部分を、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。

堂前
ドコモさん、auさんは様々な周波数を使われています。この図(下図)のように、たとえばAscend Mate 7は全部で20の周波数に対応していますが、ドコモさんの持っている周波数と対応しているのは5種類だけです。逆にドコモさんが販売している最新端末だと、ネットワークと端末の両方が一致するのですが、SIMフリー端末だと互い違いになることもあります。

この場合、たまたま行った場所で対応しない電波が吹かれていると、電話ができなかったり、圏外になってしまったりします。また、LTEにつながらず、通信速度がぐっと遅くなってしまうということもあります。これはあくまでSIMフリースマホとキャリアさん(MNO)の持つ周波数の関係ですが、MVNOだとエリアが違うというように見えてしまいがちな問題だと思います。

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図版出典:IIJ

――ちなみに、キャリア(MNO)が導入しているキャリアアグリゲーションのような技術は、即座に対応できるものなのでしょうか。MVNO側の設備の変更は必要ないと考えてよろしいでしょうか。

堂前
はい。対応しています。これは実績ベースのお話になりますが、LTEにはカテゴリーというものがあり、これがドコモさんの方で上がったとき、上がったものはすべてMVNO側に提供されてきました。あくまでキャリアさん(MNO)側が持っている設備部分の更新なので、我々の持っている交換機には影響が出ません。逆に言うと、その部分は我々からだと調べきれない部分でもあります。

「MVNOとは」という超基本のお話を聞いた前編は、以上の通りです。次回は、もう少し突っ込んだ、MVNOの技術に関する素朴な疑問をぶつけています。

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