調査会社のMM総研が、6月20日に、国内MVNOの市場規模推移を発表しました。また、携帯電話事業を管轄する総務省も、6月22日に各社のサービスの市場シェアを発表しており、格安SIMを展開するMVNOの数値も出ています。今回は、これらのデータから、MVNO市場の“今”を読み解いていきましょう。

POM社合併で楽天モバイルがシェア1位に、大手3強が明確に

 総務省、MM総研、いずれのデータでも、シェアトップに輝いたのは楽天モバイルでした。総務省では175.15万回線でシェア15.5%、MM総研では162.2万回線でシェア15.0%と、数値にはわずかな差もありますが、いずれも楽天モバイルがトップであることに変わりはありません。

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出典:総務省

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出典:MM総研

 楽天モバイルは経営破たんに陥ったプラスワン・マーケティングのFREETELを承継してユーザー数が急拡大しただけでなく、最近ではワイモバイルなどのサブブランドに近い「スーパーホーダイ」がユーザーから評価されるなど、規模を順調に拡大中。店舗展開なども積極的で、個人向けMVNOとしての強さが光ります。楽天というブランドの強さも、シェアにつながっている印象です。

 ただし、このシェア1位がいつまでも続くとは限りません。楽天は、2019年10月に、MNOとして携帯電話市場に新規参入する予定です。楽天側の計画では、楽天モバイルのユーザーを徐々に新会社に移していくことになっています。そのため、来年10月以降は、MVNOのユーザーが徐々に減っていくことが予想されます。

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サブブランドと全面対決する楽天モバイル

 楽天側には、MVNOのユーザー規模を活かすことで、新規参入時にスタートダッシュしたいという思惑がありそうですが、MVNO市場の活性化という観点では、少々残念。また、一時的にMNOとMVNOを併存させるのは、あくまで楽天側の希望であるため、ドコモがそれに応じない可能性もゼロではありません。過去にはウィルコムがソフトバンクに救済された際に、MVNOユーザーをIIJが引き受けたことがありました。こうした展開になる可能性もゼロではないため、今後の動向からも目が離せません。

 2位以下に目を移してみると、老舗のIIJmioが強い印象があります。総務省では164.98万回線でシェア14.6%、MM総研では147.8万回線でシェア13.6%と、楽天モバイルと僅差で2位につけています。決算での契約者数を見ると、IIJmioはやや伸び悩んでいるようですが、技術的な評価が高い同社に、個人のユーザーがしっかりついている様子がうかがえます。また、IIJはMVNEとして回線を提供しているため、この数まで含めると、シェアはさらに高くなります。

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国内初のフルMVNOとしてサービスを開始するなど、技術力が高いIIJ

 3位はNTTコミュニケーションズのOCNモバイルONEで、これも総務省とMM総研のデータが一致するところです。総務省では132.21万回線でシェア11.7%、MM総研では119.6万回線でシェア11.0%と、IIJにはやや差をつけられていますが、100万回線を突破し、規模を拡大しています。ここまでがシェア10%超になりますが、3社合計で40%強のシェアを占めていることになります。参入している会社の多いMVNOですが、ユーザー数で見ると、一部に集中していることが分かります。

KDDI傘下のMVNOがシェアを伸ばす

 一方で、4位以下を見ると、KDDI系MVNOが急速にシェアを伸ばしていることが分かります。総務省のデータには記載されていませんが、MM総研では、UQ mobileを100.8万回線、シェア9.3%と推計。総務省ではMNO企業が提供するMVNOを集計から除外しているため、ここには含まれないのかもしれませんが、上位3社の数値が総務省とMM総研で大きく変わらないことを見ても、MM総研側のデータに信頼性がありそうです。

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2016年に料金や端末などを一気に改定し、知名度も向上。サブブランドとして躍進した

 もう1社、KDDI傘下のMVNOが伸びていることが分かります。それがシェア6位につけているBIGLOBEです。同社は昨年10月にブランドを刷新。auのSIMカードを扱い始めるなど、よりKDDI傘下の色合いが濃くなっています。テレビCMなども大々的に展開した結果もあって、総務省では58.76万契約でシェア5.2%、MM総研では51万回線でシェア4.7%と健闘しています。

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BIGLOBE mobileにブランド刷新後、順調にシェアを伸ばしている

 MVNOの拡大に出遅れたKDDIですが、直接的な資本関係を持つ子会社や関連会社をサブブランドとして、急速な巻き上げを図っています。これは、シェア上位のMVNOや、ワイモバイルを展開するソフトバンクへの流出を抑止するためです。auを離れるユーザーが、自らのMVNOに移ればプラスマイナスゼロというわけで、KDDIのサービスを提供する接点にもなります。こうした戦略が、シェアの数値に表れているといえるでしょう。

 ここに対抗するのが、ケイ・オプティコムのmineoで、総務省では114.13万契約、シェア10.1%、MM総研では99.2万契約、シェア9.2%という数値が発表されています。規模のうえでは、UQ mobileとほぼ同等。ファンを重視する戦略が功を奏し、上位MVNOに名を連ねた格好です。

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ファン重視の姿勢でシェアを伸ばしたmineo

MVNO全体では拡大に停滞感も、目新しいサービスの登場に期待

 順調にユーザー数が拡大しているMVNO市場ですが、一方で、経年で比較すると、契約者数の伸びが徐々に緩やかになっていることが分かります。

 MM総研のデータを見ると、2016年3月末から2017年3月末までの1年間で約270万契約の伸びがあったのに対し、2017年3月末から2018年3月末までの1年間でも約273万回線と、純増数に関してはほぼ横ばいです。もちろん、純減しているわけではなく、純増数も微増ではあるため、市場は拡大を続けていますが、成長率という観点では、やや鈍化していると見ることもできます。

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出典:MM総研

 理由の1つは、ここに含まれていないサブブランドのワイモバイルが拡大したこと。また、2017年には「docomo with」や「auピタットプラン」「auフラットプラン」といった、大手キャリアの格安スマホ対抗策が続々と登場し、これらの影響を受けたのも理由の1つといえるでしょう。

 このように見ていくと、格安一辺倒では、資本力のある大手キャリアに対抗するのが難しくなりつつあるのが現状といえるのではないでしょうか。たとえばIIJが始めたフルMVNOように、従来のMVNOにはなかった何らかの新サービスを立ち上げることが打開策といえます。出尽くした感のあるスマホ向けサービスも、子どもやシニア世代に特化して展開するTONEモバイルのように、ユーザーを絞ることでも特色が出せます。各社の工夫に、期待したいところです。