IIJが、日本で初となる、ドコモのネットワークを利用したフルMVNOサービスを開始しました。当初の主力は法人向けサービスになりますが、個人でも利用できるサービスも開始する予定です。P3150125

フルMVNOとはどんなサービス

 そもそも、フルMVNOとはどんな形態のMVNOを指すのでしょうか。これまでのMVNOは、ドコモ、au、ソフトバンクといった大手キャリアから基地局などの設備を帯域単位で借り、ユーザーをインターネットに接続するところまでの役割を担っていました。この点は、フルMVNOでも変わりはありません。

 大きな違いは、加入者管理機能を持ち、独自にSIMカードを発行しているところにあります。加入者管理機能とは、利用者がどの基地局につながるのかを制御するための装置。一般ユーザーにはあまり意識されることがありませんが、これまでのMVNOは、ドコモなど、回線を貸し出す側の設備をそのまま利用していました。

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フルMVNOとライトMVNOの違い

 この加入者管理機能をMVNOが持つのは、「平たくいうと、独立した移動体通信事業者になるということ」(IIJ MVNO事業部長 矢吹重雄氏)。MVNO側のコントロールできる部分が増え、事業の自由度が高まるのが、IIJにとってのメリットです。

 その1つとして、たとえばSIMカードの開通や停止といった作業を、IIJが独自にできるようになります。IIJではこれを「ライフサイクル管理」と呼んでいますが、具体的には「分かりやすいところだと、機器のメンテナンスのときだけ回線を有効化する」(矢吹氏)ことが可能になります。回線は必要でも、常時接続まではいらないというIoT向けのサービスがしやすくなるといえるでしょう。OLYMPUS DIGITAL CAMERA
フルMVNOのメリットを語るIIJの矢吹氏

 また、海外の事業者とIIJが直接交渉することで、国際ローミングサービスも可能になります。フルMVNOのSIMカードの場合、海外に行くとローミング事業者に自動で切り替わるようになるといい、このサービスは「6月をめどに提供を考えている」(矢吹氏)といいます。SIMカードの形状も、今のプラスチックタイプにこだわる必要がなく、機器に直接組み込むことが可能になります。

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ビジネスモデルにも多様性が出る

 将来的には、eSIMやローミングサービスなど、さまざまなサービスを検討しているIIJですが、現時点で利用できるのは、法人向けの「IIJモバイルサービス/タイプI」になります。先に挙げた、ライフサイクル管理に対応しており、10GBでグローバルIPv4アドレスを使用した場合、3600円なのに対し、サスペンド時は月に30円しかかからない設定になっています。こうした柔軟さが出せるのが、フルMVNOの特徴といえるでしょう。

個人ユーザーでもフルMVNOサービスを使える

 では、フルMVNOのサービスが完全に法人向けかというと、必ずしもそうではありません。IIJでは、今後の予定として、2018年度中に「IIJmio/タイプI」を投入することも計画しています。詳細は不明ですが、フルMVNOらしいプランにするつもりとのことで、従来のタイプDやタイプAとは違ったサービスになりそうです。

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IIJの予定するサービス

 さらに、4月2日からは、ビックカメラなどで、訪日外国人向けの「Japan Travel SIM」も発売されます。訪日外国人向けと銘打ってはいますが、特に国籍を問わずに買えるとのこと。フルMVNOのサービスをいち早く体感してみたい人は、購入してみてもいいかもしれません。

 料金はオープン価格ですが、ビックカメラでは、1.5GBが1850円、3GBが2800円で販売されます。利用期間は初回開通から30日間で、クーポンカードを利用すれば期間延長も可能とのこと。SIMカードはnano、micro、標準と3つのサイズに切り取ることができます。Japan Travel SIMは現状、1GBが2460円、2GBが3780円で販売されているため、フルMVNO版の方が安上がりになり、しかもSIMカードのサイズを間違える心配もありません。

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Japan Travel SIMもフルMVNO版が発売される

 これはフルMVNOになることで、プリペイドSIMのビジネスモデルが変わるためです。ほとんどの訪日外国人向けプリペイドSIMは、半分開通された状態で店頭に置いておかなければならず、1枚あたり、100円程度のコストがかかっていました。在庫があるとコストが積み上がるうえに、SIMカードのコストも「394円になり、各社がプリペイドSIMから事実上、撤退まではいかないが、力を入れていない状態」(矢吹氏)だといいます。実はこれも、独自に開通処理ができるフルMVNOならではのサービスなのです。

フルMVNOのSIMカードを挿してみた

 実際に、フルMVNOのSIMカードをSIMフリーのiPhone Xに挿してみました。まず、注意点として、これまでのようにドコモからSIMカードを借りているわけではないため、ドコモのSIMロックがかかった端末は使えません。端末側からは、「IIJのSIMカード」というように見えます。

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筆者のiPhone XにフルMVNOのSIMカードを挿入

 そのため、画面上にも、接続しているキャリアとして「IIJ」が表示されます。また、iPhoneはドコモ、au、ソフトバンクのSIMカードを挿すと、APNの設定項目が設定アプリから消えてしまう仕様ですが、IIJの場合は、APN設定画面が現れます。海外キャリアのSIMカードを挿した際にこのような挙動をする場合がありますが、APNは手動で入力できます。

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ピクトマークにもIIJの文字が

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APNの設定もできる

 ちなみに、iPhoneの場合は、特にAPNを入力する必要なく、自動で接続してしまうとのこと。ただし、iOSのバージョンによって挙動が変わる可能性もあるため、公式にはアナウンスはしないそうです。

 訪日外国人向けという観点だと、わざわざキャリア構成プロファイルをインストールする必要もなく、SIMカードのサイズを間違えて買うおそれもないため、値段も安いフルMVNO版のJapan Travel SIMの方が、利用価値は高いといえるでしょう。IIJmioでどのようなサービスが始まるのかも、今から楽しみです。