サブブランドや大手キャリアの低料金プランに押され、MVNOの勢いにブレーキがかかる中、総務省で「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」が開催されています。この検討会では、MVNOとサブブランドの“格差”が取りざたされるなど、格安スマホ市場を左右しそうな議論が交わされています。結論はまだこれからですが、MVNOと大手キャリア、双方の主張をチェックしていきましょう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
検討会第2回の様子

サブブランドに対する歯止めを求めるMVNO

 勢いを増すワイモバイルやUQ mobileに対し、「待った」をかけているのがMVNOです。検討会の第2回では、楽天やIIJ、ケイ・オプティコムといった大手MVNOが出そろい、各社の主張を展開しました。サブブランドに対しては、以下の主張がMVNOの共通見解に近いといえるでしょう。ここでは、楽天のコメントを紹介します。

「サブブランドのネットワーク速度は、他のMVNOを大きく上回っている。コスト面で、MVNOでは提供不可能な水準」

1
楽天はサブブランドの速度が速すぎると指摘

 同様のコメントはmineoを運営するケイ・オプティコムからも出ています。ケイ・オプティコムは、実際、サブブランドと同程度の速度が出るには、どの程度の帯域が必要かを試算。そのうえで、「1加入者あたりのデータ利用料が極めて高くなる」と話しています。詳細なデータは非開示でしたが、数倍程度ではない料金になるとのこと。サブブランドに対して、MVNOは不公平な環境におかれているというのが、MVNO側の主張です。

2
ケイ・オプティコムはサブブランド並みの速度を実現するための料金を試算

 さらに、IIJも、「(速度は)ワイモバイルがダントツで速く、しかも安い。グループとして帯域を金額換算したコストにちゃんと見合っているのか」と疑問を投げかけています。

 また、ドコモ、KDDI、ソフトバンクといった大手キャリアに対しても、要望が出されました。音声通話の料金はその1つ。たとえば楽天は「音声卸料金に関しては、MNOの言い値で高止まりしている。準定額や定額料金が適用されていない」といいます。定額や準定額については、MVNO各社が中継電話でサービスを行っていますが、通常の音声通話は一般的に、30秒20円の料金がかかります。これが割高であるというのが、MVNO側の考えです。

3
楽天は音声通話の卸価格についても、疑問を投げかけた

UQ mobileはあくまでMVNOの1社と反論

 こうしたMVNO側の主張に対し、UQ mobileを運営するUQコミュニケーションズや、ワイモバイルを展開するソフトバンクが反論するというのが、検討会第3回目のハイライトでした。まず、UQの親会社であるKDDIは、次のようにコメント。あくまで、ネットワークは公平に各社に提供していると主張しています。

「auのネットワークは公平に提供していて、UQ mobileもそのワンオブゼム。提供条件はすべて公平で同等」

4
KDDIとUQは、接続料は公平であると反論した

 UQもこれに重ねる形で、「接続料で特に優遇を受けていることはない」と援護射撃をしています。他のMVNOに対してお昼などの混雑時でもスループットが高く出るのは、それだけ帯域を買っているからだというわけです。なぜこのような帯域を買えるのかについては、次のように説明しています。

「いわゆる格安SIMよりも料金設定は高く、これで収益を確保しながら、快適な通信環境を提供している。テレビCMも弊社の経営の中で適切に提供しており、知名度向上や安心感醸成のための先行投資という位置づけ」

 UQはUQ mobileのほかに、UQ WiMAXもサービスとして提供しており、WiMAX 2+については、MNOとして、auにもネットワークを貸しています。ユーザーは区別なく、auとUQのネットワークの両方を使えるため、あまり意識することはありませんが、Band 41はUQのWiMAX 2+で、auとUQをまたがったキャリアアグリゲーションも行えます。自社で直接ユーザーにサービスを提供しているだけでなく、auもUQのユーザーの1社になっているというわけです。

5
UQはWiMAX 2+をKDDIに貸し、KDDI経由でMVNOに又貸しされている

 ちなみに、UQからKDDIにネットワークを貸し出す際の料金も、あくまで「ビジネスベースで、他のMVNOに卸す料金と比べても、おかしな金額にはなっていない」といいます。回線数が膨大なため、トータルでの金額は大きくなりそうですが、不公平なことは行っていないというのがUQの主張といえるしょう。

ワイモバイルはソフトバンクの中のいちブランド

 これに対し、ワイモバイルはそもそもMVNOですらなく、「ブランディングが異なるだけで、他社(ドコモやKDDI)のやっている低料金プランと同じ位置づけ」というのが、ソフトバンクの主張です。実際、ワイモバイルの運営元はソフトバンクで、接続できるネットワークも同じ。MVNOとは異なり、帯域をソフトバンクから借りているわけではありません。

 元々、総務省はMVNOと大手キャリアの競争を通じて、料金の値下げを促進してきただけに、低価格なワイモバイルは、その1つの成果ともいえます。ソフトバンク側もこうした事情を指摘し、「総務省の過去のタスクフォースでも一定の評価を得てきた」と語っています。

6
ワイモバイルはMVNOでないことを強調するソフトバンク

 一方で、ソフトバンクは、「本検討会で何らかの検証を行うことが適当というのであれば、総務省に情報を提供する。ただし、その際には接続料の妥当性を検証するのか、不当廉売的側面の話なのか、特定のサービスが赤字になっていると問題なのか、結果に対する評価を明確にしてもらいたい」と主張しています。

 情報提供には全面的な協力を約束しつつも、検討会で出た結論が何を目的にしているのかを明確にしてほしいというのが、ソフトバンクの考えです。先に述べたとおり、ワイモバイルはMVNOではなく、あくまでソフトバンクが自社のサービスとして提供しているサブブランド。そのため、仮に総務省がサブブランドを規制するにしても、何がいけないのかは、対MVNO以上に明確にする必要がありそうです。

7
検証目的や対象を明確化することを求めるソフトバンク

 ソフトバンクは「我々はたまたまワイモバイルというブランドにしているが、ではブランドをやめてソフトバンクの中のいちサービスにしてしまうと、それは見なくていいのか」と疑問を投げかけています。仮に見るとしても、「我々だけでなく、(ドコモやKDDIなどの)他社もサービス単位で見ていく必要があり、どういう単位で見ればいいのかかなり難しい話」になりそうです。

 検討会は始まったばかりですが、MVNOとサブブランドの議論は、まさに平行線といったところ。競争環境が不公平だと主張するMVNOに対し、サブブランド側はあくまで同等の条件で戦っていると反論しています。

 筆者としては、どちらの考え方も理解はできますが、これ以上の規制が果たして本当にいいことなのかには、疑問符もつきます。UQ mobileやワイモバイルに歯止めをかけてまで、公平性を保つのが、競争にとっていいとは思えず、率直に言えば、足の引っ張り合いにも見えるからです。どちらかを落とすのではなく、逆にMVNO側が有利に戦えるよう、何らかの下駄をはけるような措置があるのであれば、そちらに舵を切った方がいいのではないか。検討会を取材していて、そんな印象も受けました。