2017年もあとわずか。今年も、格安スマホ、格安SIM業界には大きな動きがありました。そこでここでは、MVNO編、SIMフリー編と2回に渡り、格安スマホの1年を振り返っていきます。

勢いに乗るサブブランド、auはUQ、BIGLOBEで対抗軸を作る

 2017年は、大手キャリアのサブブランドが引き続き好調な1年でした。中でも、勢いがおとろえ知らずなのが、ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイル。2月からは、Yahoo!プレミアムの会員費を無料にするなど、そのお得度をさらに増してきました。iPhoneと同時にAndroid Oneを提供するワイモバイルは、同時に、アンバサダープログラムを立ち上げ、サポートも強化します。

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Yahoo!プレミアム連動を開始。アンバサダープログラムも導入した

 2016年に導入したAndroid Oneはラインナップをローエンドの「Sシリーズ」と、ミドルレンジの「Xシリーズ」の2つに拡大。11月に開催された発表会では、シャープ、京セラに続き、HTCもメーカーに加わり、バリエーションも増えています。また、同時に学割も導入し、2年間1980円からという料金が話題を集めました。ワイモバイルは2018年の学割を巻き上げ、2017年12月から「タダ学割」として、最大3カ月間料金が無料になるキャンペーンを実施しています。

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2017年の学割が好評だったことを受け、2018年の学割は前倒しで2017年12月に開始

 ここに対抗してきたのが、auのサブブランドであるUQ mobile。2016年には端末のラインナップを大幅に拡充し、テレビコマーシャルも放映するなど、大きな勝負をかけてきました。こうした結果が伴い、ユーザー数は順調に伸びているといいます。1月には、7GBと大容量の「Lプラン」をスタート。電話が5分間かけ放題になる「おしゃべりプラン」も、2月に開始し、ワイモバイル追撃の姿勢を強めています。

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5分かけ放題の「おしゃべりプラン」や、7GBの「Lプラン」を導入したUQ mobile

 また、auは2月に、BIGLOBEも傘下に収めており、MVNO戦略を強化しています。そのBIGLOBEは、9月にブランドを一新。ロゴも改め、新生BIGLOBEとして、「SIM替え」を打ち出してきました。端末までセットで提供する充実のUQ mobileに対し、手持ちの端末でSIMカードを変える層をフォローしていくというのが、BIGLOBEの差別化戦略です。BIGLOBEは、ブランド刷新からやや遅れたタイミングで、au回線を使った「Aプラン」もスタートさせています。

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BIGLOBEはブランド変更と同時に「SIM替え」を訴求。Aプランも開始した

サブブランドに押され、破たんするMVNOも

 一方で、MVNOの数は600を超え、淘汰も始まりつつあります。代表的なのは、楽天に買収されたプラスワン・マーケティング(POM社)のFREETELでしょう。同社は、テレビコマーシャルに女優の佐々木希さんを起用するなど、派手な宣伝展開で話題を集めていましたが、こうしたコストがかさみ、MVNO事業は大赤字に転落してしまいました。この負債を引き取ったのが、ユーザー数の拡大を目指していた楽天です。

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有名タレントを起用など、派手なCM展開が裏目に出たFREETEL SIM

 楽天は、POM社のMVNO事業を約5億円で買収。2018年1月には、ブランドを楽天モバイルへと統合し、FREETEL SIMのユーザーには特別な移行プランなどを用意していく予定だといいます。この結果、楽天モバイルのユーザー数は、FREETEL SIMのユーザー数と合わせて140万を突破。一躍、個人向けMVNOのシェアトップに躍り出ました。

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POM社を買収した楽天の楽天モバイルは、一気に140万契約を突破

 MVNO事業が破たんしたというわけではありませんが、先に挙げたBIGLOBEも統廃合の一例。ほかには、ニフティが運営するNifMoも、ノジマ電気に買収されており、MVNO事業を運営する会社が苦しい状況にあることが分かります。シェアが高い事業者も安泰というわけではなく、たとえばIIJmioも、サブブランドの攻勢を受け、純増数が伸び悩みを示しています。

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IIJmioの純増数も、一時期に比べ、伸びが小さくなっている

 こうした中、楽天にMVNO事業を譲渡したPOM社が、民事再生法の適用申請を裁判所に提出しました。POM社に残っていたのは端末事業でしたが、こちらも負債が大きく、経営が厳しかったことがうかがえます。現状では、とりかえ~るなどのサービスも停止中。POM社は、マヤシステムに協力を仰いでおり、民事再生法の適用が認められれば、そこからの経営再建が始まります。

 経営破たんまでいってしまったPOM社はあくまでも象徴的な例ですが、MVNOの多くが苦しんでいるのも事実。MVNOの数を考えると、小規模な買収劇は、来年も引き続き起こるはずです。その意味で、2017年は、より勝ち組と負け組がはっきりしてきた1年だったといえるかもしれません。

ソフトバンクSIMのサービス開始、フルMVNOへの道筋も

 1年を振り返ってみると、2017年はサービスの内容に広がりがあった年でもありました。ドコモ、auのネットワークに限られていたMVNOが、3社目のソフトバンクに広がり始めたのも2017年の話。日本通信は、3月22日に、ソフトバンクのデータ通信を使った「開幕SIM」のサービスをスタートさせています。

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3月22日に、ソフトバンク回線を使ったサービスがスタートした

 その後、日本通信は音声通話対応SIMなどにサービスを広げています。MVNEとしてもソフトバンクのネットワークを提供しており、U-NEXTが、「U-mobile S」としてサービスを開始。徐々にではありますが、ユーザーを広げています。また、日本通信以外では、ソニーネットワークコミュニケーションズも、ソフトバンク回線を使ったMVNE事業を開始。12月には、自身のnuroモバイルとしても、ソフトバンク回線を使ったサービスを提供する予定です。

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U-mobile Sは、本サイトも使用感をレポート

 MVNOとしての機能を、一歩深める取り組みも進みました。IIJは2018年3月までに、フルMVNOのサービスを提供します。フルMVNOとは、HSS/HLRと呼ばれる加入者管理機能までを自ら運用するMVNOのこと。IIJはドコモとHSS/HLRの開放で合意を取っており、自身でSIMカードまでを発行し、サービスを提供する予定です。

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IIJは、3月までにフルMVNOのサービスを開始する

 当初は法人向けや、訪日外国人観光客向けのプリペイド型SIMカードがビジネスの主流になりますが、eSIMを採用する端末が増えてくるなどすれば、一般コンシューマーにも関係が出てくる可能性があります。海外で利用する際に、現地キャリアの情報を直接書き込めるようになるなど、メリットはゼロではありません。2018年に向けた動きの1つとして、注目しておきたいところです。