楽天は、プラスワン・マーケティング(以下、POM社)のMVNO部門を買収すると発表しました。買収完了は11月を予定。「FREETEL SIM」のユーザーが楽天モバイル傘下に入れば、業界シェア2位に躍り出ることになります。

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MVNO事業が楽天に買収されるFREETEL

財務的に苦しいFREETELを救った楽天モバイル

 改めてFREETEL SIMの成り立ちを振り返ってみましょう。POM社は元々、SIMフリースマホがまだほとんど出回っていない時期に、端末開発を手掛けてきたベンチャー企業でしたが、その後、MVNOに参入。「フリモバ」として、MVNE経由でサービスを提供していました。

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POM社は2013年からSIMフリー端末を手掛けてきた

 このブランドを一新したのが、2015年のこと。POM社が開催したイベントで、「FREETEL SIM」とサービスを改めることが発表されました。それに伴い、ドコモと直接L2接続をして、料金やサービスなどの設計をPOM社が行うようになりました。

 当時の取材を改めて振り返ると、代表取締役社長の増田薫氏が、「SIMフリーキャリアとして、ワンストップでサポートをしていく」と宣言していたことを思い出します。ブランド刷新と合わせ、使ったデータ量に応じて自動的に料金が変動する、「使ったぶんだけ安心プラン」の提供も開始しています。当時は、「最高の品質を、そのままご提供する」と自信をのぞかせていました。また、ショップ展開を強化したのも、このときのことです。

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2015年にブランドを刷新、MVNOとして本腰を入れ始めた

 ところが、こうした急速な事業展開がアダとなり、MVNO事業は外から見える以上に、火の車だったようです。楽天側が発表した資料によると、POM社のMVNO事業は、資産が18億7700万円なのにたいし、負債は30億9000万円と、債務超過の状態。事業継続には黄色信号がともっており、実際、楽天買収に至るまでの間にも、他のMVNOに売却の打診があったという話が聞こえてきます。

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MVNO事業は債務超過の状態だった

 財務的にお荷物だった事業を切り離すことで、POM社はより身軽になれるのがメリット。今後は端末事業に専念していくことになりそうです。これに対して楽天モバイルは、ユーザー数が100万を超えることになり、大手事業者の一角として、ワイモバイルを追撃する体制を強化できます。負債込みとはいえ、1ユーザーあたりにかける獲得コストを考えると、10億円という買収価格は安価だったといえるかもしれません。

大手資本に業界再編が進みつつある現状

 楽天のPOM社買収でMVNO業界再編が始まると考える向きもあるようですが、筆者の見解は少々異なります。すでに業界再編は進みつつあり、その一端が楽天のPOM社買収だと見ています。昨年時点で、すでに日本通信が個人向け事業のb-mobileを、U-NEXTとの共同運営に切り替えており、事業継承こそなくなったものの、協力関係が密になっています。

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日本通信はU-NEXTとb-mobile事業を共同運営している

 さらに、MVNO事業だけでの買収ではありませんが、BIGLOBEもKDDIに買収されており、KDDIの「モバイルID数」増加を担う一翼になっています。BIGLOBEは、ブランドの刷新を行っており、9月には「SIM替え」を打ち出したテレビCMも開始しています。

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BIGLOBEもKDDIグループになり、CMを大々的に展開中

 現状では700社を超えるといわれるMVNOですが、実態を見ると、大手に集約されつつあるというわけです。OCNモバイルONEはNTTグループで、IIJmioも独立的に運営されてはいますが、NTT資本が入ったMVNO。また、大手ではmineoも、関西電力グループです。BIGLOBEは上で解説したようにKDDIグループ。楽天モバイルにも、楽天という強力なバックボーンがあります。これは、LINE MOBILEのLINEも同様です。
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大手グループに集約の進むMVNO

 もちろん、親会社が強力でも、事業的に成立しなければ他のMVNOへ売却される可能性もあるとは思いますが、ある程度安定して運営していく上では、規模も重要になります。サブブランドとしてワイモバイルやUQ mobileが勢いを増す中、中小規模のMVNOは、さらに厳しい戦いを強いられることになるかもしれません。

どうなる今後のMVNO

 今後は、この傾向に拍車がかかることも予想されます。そうなったとき、考えられるシナリオは、楽天やLINEのように、体力ある会社が、中規模、小規模のMVNOを買収し、拡大していくというものです。戦略的に買収を仕掛けるケースではなく、経営が立ち行かなくなったMVNOを、救済的に吸収するというパターンもあるでしょう。

 ワイモバイルやUQ mobileが拡大している傾向を踏まえると、ある程度、大手キャリアのサブブランドに集約されていくことも十分考えられます。KDDIについては、複数に分かれているサブブランドを集約する可能性もあるかもしれません。ただ、ドコモはサブブランドの新設には否定的な見解を示しているため、2社のサブブランドと、ドコモ系MVNOの強いところ数社で戦うという構図になる可能性もあります。

 格安SIM、格安スマホ以外の道を模索することも、急務です。IIJは自社で加入者管理機能を持ち、フルMVNO化する道を模索していますが、差別化のためには、こうした取り組みが必要になりそうです。価格競争に明け暮れているだけだと、消耗戦になりがち。ある程度大規模な投資も必要になりますが、格安以外を目指すMVNOが、もっと出てきてほしいとも感じます。