TONEブランドでMVNO事業を行うトーンモバイルが、8月1日に新機種を発売します。同社は、原則として1機種1プランでサービスを展開。音声通話や、動画閲覧に必要な高速通信用のチケットは、すべてオプションという扱いにして、シンプル化を図っています。自社サービスをOSレベルから盛り込むため、端末も1機種に絞り、開発まで手掛けているのが特徴。MVNOの中ではここまで踏み込んだビジネスモデルを採用した会社は珍しい存在と言えるでしょう。

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富士通製造で安心・安全を売りにした「TONE m17」

 これまで、ODMを活用して自社開発を続けてきたトーンモバイルですが、比較的メジャーな端末メーカーのベースモデルを使うこともありました。たとえば、「TONE m14」は中国メーカーのTCL製。大手メーカーと組むことでノウハウを吸収し、それを次の端末開発に応用するというのがトーンモバイルの狙いです。この流れをくむTONE m14に続く、TONE m15は、ODMでの製造になりました。2
ODMと大手メーカーを順番に利用することで、ノウハウを吸収

 TONE m17の開発にあたって、トーンモバイルが白羽の矢を立てたのが、日本メーカーである富士通です。TONE m17を見ればわかるように、その姿はarrows風。それもそのはず、TONE m17のベースモデルとなるのは、先日発表されたばかりの「arrows M04」なのです。ディスプレイを取り囲むように盛り上がったフレームがあったり、側面がツートン構造になっているのは、そのためです。

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「TONE m17」は富士通が開発

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「arrows M04」に近い外観

 端末のスペックも、arrows M04と同等になっています。そのため、トーンモバイルとしては初のおサイフケータイに対応。ワンセグも搭載されており、富士通端末ではおなじみの耐衝撃性も備えています。arrows M04には、ミッドレンジ向けのチップセット「Snapdragon 410」が搭載されていますが、これも同じです。

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ステンレスフレームが液晶を守る凹型の構造を採用

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TONEの端末としては初となるおサイフケータイに対応

 トーンモバイルがあえて富士通に端末開発を依頼したいのは、同社が安心や安全をキーワードに、子ども向けのビジネスを展開しているため。手荒に扱っても簡単には壊れず、しかも今回はハンドソープで洗えるレベルの防水・防塵に対応しているため、汚れても衛生的です。こうした声は、トーンモバイルと提携している雑誌『VERY』の意見も参考にされたといいます。

ソフトウェアは完全にTONE仕様で独自の安心・安全機能も

 一方で、売りとなるソフトウェアは完全にオリジナルで、arrowsの痕跡は通知や設定メニューなどにわずかに残っている程度。ホーム画面から内蔵アプリに至るまで、基本的にはすべてTONE仕様で貫かれています。単なるアプリではなく、ミドルウェアまで含めた開発をしているというのも特徴。

 たとえば、IP電話アプリは、通信品質を安定させるために、あえてWi-Fiにつながないような仕様になっています。同社の石田宏樹社長によると、IP電話利用時だけ、専用の帯域に切り替える仕組みも搭載されているとのこと。バックグラウンドである通信とも、きちんと連携しているのです。

 また、TONE m17に合わせ、家族向けの見守りアプリも進化しました。その代表的な機能が、「親子スマホの約束」。これは、専用の紙に書いたスマホ利用時の約束を、カメラで撮るだけで本体に反映させるというものです。たとえば、LINEの利用を21時から翌日の6時まで禁止したい場合、紙にそのように書き込み、それを映すと設定が反映されるのです。これなら、親がスマホの機能に疎くても、簡単に設定できるでしょう。

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紙に書いた設定を反映できる「親子スマホの約束」

 一歩踏み込んだのは、中学生未満の子どもは、22時から翌6時まで、本体が使えなくしたこと。もちろん、うえで挙げた親子スマホの約束でこれを解除することはできますが、小学生以下には一律で制限をかけてしまうというのが、トーンモバイルの方針。SNSやメッセンジャーアプリで、犯罪に巻き込まれたり、友だちとエンドレスで連絡を取り合って依存関係になってしまったりと、子どものスマホ利用にはさまざまな問題が指摘されていますが、ここに真っ向から応えた格好です。

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中学生になるまでは、22時から翌6時までの利用が原則禁止に。設定で解除は可能

速度制限も撤廃し、通信環境もより快適に

 こうした一連のバージョンアップと同時に、トーンモバイルは、これまでかけていた通信制限を撤廃する方針を発表しました。トーンモバイルは、現状、500Kbsp前後に速度が制限されており、動画などを見るには、専用のチケットが必要になります。500Kbpsといっても、アプリなどを使うぶんには問題がないのかもしれませんが、やはりWebの読み込みなどには時間がかかります。

 この速度制限を、8月に撤廃。月額1000円の範囲で、制限なく通信を使うことができるようになります。容量の上限がなく、この料金で使い放題なのは、他社の完全定額プランと比べても、かなり割安。子どもやシニアにターゲットを絞った結果、ドコモから借りている帯域にもある程度余裕が出たのかもしれません。ただし、当然、帯域には限りがあるため、この発表を受け、ヘビーユーザーが急増してしまうと、トーンモバイルの目論見通りにはいかなくなってしまいます。この点がどうなるのかは、今後も継続して注目しておいた方がいいでしょう。

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現状では500~600Kbpsに制限される速度の上限が撤廃

 また、動画の視聴やアプリのダウンロードについては、現状のチケット制度が継続されます。速度制限が撤廃され、速度が上がっても、動画の閲覧はできないとのこと。これは先に挙げたIP電話と同様、動画の視聴にも専用の帯域を使っているため。高速チケットは、単に速度を上げるだけでなく、裏側で動画専用の帯域に切り替えるためのものだといいます。

 TONEは、端末と通信をセットで使うことを前提にサービスを設計しているため、他のMVNOのように、SIMカードだけを買って、好きな端末に挿すという気軽な使い方ができません。サービス自体は子ども向け、シニア向けが中心になってくるため、スマホにこだわりのある人には不向きです。一方で、月額1000円で、IP電話サービスまでつき、データ容量も使い放題というのはやはりお得。子どもやシニア以外の人にとっても、魅力が出てきたと言えそうです。