MVNOは、大手キャリアから「帯域」を借り、それをエンドユーザーに対して提供しています。帯域は10Mbpsの単位で借りることができ、金額は大手キャリア3社ともが、公表しています。相互接続は大手キャリアに義務づけられており、それを拒むことができないからです。

 MVNOが借りている帯域はまちまち。ユーザー数も異なるため、帯域とのバランスが悪いと、混雑時に速度が低下してしまいがちです。実際、多くのサラリーマンや学生がお昼休みを取る12時台は、一斉にスマホが使われるため、MVNOによっては大きく速度が低下する傾向があります。

 スピードテストは、この速度が、実際どのくらい速度が出ているのかを測る方法の1つ。仕組みとしては、特定のサーバーから比較的容量の大きなファイルをダウンロードまたはアップロードして、それが完了する時間を測り、何Mbps出ているのかを導き出しています。スピードテストは、そのMVNOでどのくらい速度が出るかの指標の1つと言えるでしょう。

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通信の快適さを示す指標の1つになっているスピードテスト

20160308
MVNOは帯域を借り、大手キャリアと接続しているため、会社によって速度はまちまち

スピードテストが速くても、動画の読み込みが遅いケースも

 ところが、スピードが出ていても、いざ動画を読み込もうとしてみたら、なかなか進まないといったこともあります。たとえば、以下のスクリーンショットを見てください。これはFREETELのSIMカードを使い、平日の夕方に速度測定した結果と、YouTubeの動画閲覧時の画面を並べたものです。動画視聴中にどのくらいの速度が出ているのかは、「通信速度モニター」というアプリで確認しています。

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スピードテストと動画再生中の速度がかい離していた

 ご覧のように、スピードテストでは14Mbps以上と、なかなか優秀な結果をたたき出していますが、動画視聴中には、1Mbps前後まで速度が落ちています。単に速度が落ちるだけならいいのですが、よくよく見てみると、画質も劣化しています。これは、YouTube側に、速度に応じて自動的に画質を調整する仕組みがあるため。同時間帯にキャッシュを削除したあと、LINE MOBILEで読み込んだ同じ動画と比べてみると、違いは一目瞭然です。

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上がFREETELで、下がLINE MOBILE。LINE MOBILEの方が映像が鮮明だった

 逆に、解像度を固定で720pにして再生してみたところ、FREETELのみ、動画の再生が途中で止まってしまいました。読み込みに、再生が追いついてしまったからです。
 通信速度モニターの速度にも、大きな違いが出ていました。FREETEL SIMはスピードテストと動画閲覧時の速度に大きな違いが出ていたのに対し、LINE MOBILEはスピードテストとほぼ同じ範囲で、10~20Mbps速度が出ていました。そのため、30秒程度のCMであれば、読み込み開始後すぐに、キャッシュの蓄積が終わっています。この結果だけで一概には言えませんが、FREETELのSIMは、あまり動画を見るのに適していないようです。

ピークタイムの12時台にも検証

 では、MVNOのピークタイムであるお昼休みの時間帯はどうでしょうか。FREETEL SIMを使い、本サイトを閲覧したり、YouTubeで動画を見たりしながら、速度を測ってみました。まずはスピードテストの結果から。以下のスクリーンショットを見ると分かるとおり、さすがにピークタイムは厳しいこともあってか、1.5Mbps前後しか速度が出ていません。

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ピークタイムの速度は1.5Mbps前後に低下

 一方で、1Mbps程度でも、画像があまり大きくなれば、サイトの閲覧程度はそこまで苦になりません。ニュースサイトのように、文字や小さなサムネール画像が中心の場合は、画像の読み込みに時間がかかっていることは体感で分かりましたが、本文を読み進めているうちに、通信が完了していました。平常時より、わずかに時間がかかるといった印象です。通信速度モニターを見ても分かるとおり、画像を読み込む際には、1Mbps程度の速度は出ていたようです。

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表示するものにもよるが、3Mbpsを超えていることも

 ただし、動画閲覧時には、速度がさらに絞り込まれていたようです。通信速度モニターでは、動画閲覧中の速度が、200Kbps台から600Kbsp台で推移していました。1Mbpsを割り込んでいたためか、再生中に動画が止まってしまったこともしばしば。残念ながら、快適に動画を見ることはできませんでした。また、速度が大幅に低下していたためか、画質もかなり劣化していました。スクリーンショットを縦位置で取ってしまったため、分かりづらいかもしれませんが、横位置だと明確に違いが出ていたほどです。

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速度が1Mbpsを割り込み、動画が止まることも

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同時間帯でもLINE MOBILEは通信が安定していた

スピードテストの過信は禁物

 なぜ、スピードテストと動画を見るときの速度に、ここまで違いが出るのでしょうか。ネットでは、宣伝のため、スピードテストの速度を“偽装”しているといった疑惑もささやかれています。技術的には、確かに、スピードテストだけを優先すればこのようなことは可能かもしれませんが、全体的な体感速度が落ちてしまうため、ユーザーの満足度は下がってしまいます。さすがに、あえてスピードテスト以外の速度を絞っているとは、考えにくいでしょう。合理性がなく、リスクが大きすぎるからです。

 実際、過去にプラスワン・マーケティングの増田薫社長を取材した際には、こうした疑惑を完全否定していました。一方で、特定のサイトだけが遅くなってしまうことはあったといいます。今回の測定結果を見る限りでは、サイトの閲覧ではスピードテストとほぼ変わらない速度が出ていたため、YouTubeの動画に対し、ピンポイントで制限をかけていたということかもしれません。テストでは、YouTube以外の動画を確認していないため、確かなことは言えませんが、動画全般を制限している可能性もありそうです。

 MVNOの中には、混雑時に、通信量を減らす処理をかけるなど、何らかの制限をかけているところがあります。FREETEL以外では、たとえば、楽天モバイルも、「通信の最適化」として、動画などに圧縮処理をかける可能性があることに注意事項で言及しています。このように、通信品質はスピードテストだけでは測ることができません。あくまで指標の1つとして捉え、総合的に判断した方がいいでしょう。14
MVNOによっては、圧縮などの制御をかけていることも。画像は楽天モバイル

 もっとも、実際に使ってみるまでは、その品質はなかなか判断しづらいところではあります。口コミも参考にはなりますが、それが投稿されたときと、必ずしも状況が同じとは限りません。その後、ユーザーが急増して、速度が低下していたという可能性も十分ありえます。そのため、使ってみたいMVNOがあったら、お試しとして、まずは解約が自由にできるデータプランを契約してみてもいいかもしれません。