格安SIMと言えば、そのほとんどがドコモから借りたネットワークで、mineoやUQ mobile、IIJ mioのAプランなどはあるものの、auのネットワークは限定的でした。ソフトバンクに至っては、いわゆる格安SIMというものがほぼなく、MVNOがあっても、料金水準がソフトバンクとほぼ同じということがほとんどでした。この状況が、3月に変わることになるかもしれません。

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“格安SIM”の料金水準でソフトバンクのネットワークが使える

 日本通信は、2月1日にソフトバンク回線を借りたサービスを、3月22日から開始すると発表。このSIMカードは、ソフトバンクのSIMロックがかかっている、iPhone 6、6 Plus以前のiPhoneやiPadでも利用できるといいます。ドコモのネットワークを使うMVNOでは同様のことが可能でしたが、これがソフトバンクでも実現するというわけです。多くのドコモ系MVNOと同様、相互接続という形態を取っているため、いわゆる“格安SIM”と同レベルの料金を期待できそうです。

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SIMロックが解除できない過去のソフトバンク版iPhoneでも利用できるようになる見込み

 また、日本通信はMVNEとして、多くのMVNOをサポートしています。U-NEXTはその代表的な1社で、同社は日本通信だけでなく、IIJやフリービットからもネットワークを借り、複数のMVNEを活用する形で事業を展開しています。こうしたMVNOに対し、日本通信はソフトバンクのSIMカードを提供していく予定だといいます。日本通信によると、その数は徐々に増えていき、初年度で「50社程度になる」(代表取締役社長 福田尚久氏)とのことで、幅広いブランドから選べるようになる見通しです。

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決算説明会で、ソフトバンク回線を使ったサービス開始を宣言した日本通信の福田社長

 一方で、現状では、まだサービスの詳細が発表されていません。日本通信自身のブランドとして展開するb-mobileにソフトバンク回線を使ったプランが出るのかどうかも、未知数です。また、詳細な料金がいくらになるのか、音声プランとデータプランの両方がそろうのかなども、公開されていません。3月22日に向け、徐々に情報が出そろってくるはずなので、今後の展開にも注目しておいた方がいいでしょう。

当初提供されるのはiPhone、iPad用のみ

 また、当初提供されるのはiPhone、iPad用のSIMカードで、ソフトバンクのSIMロックがかかったAndroidでは利用できない可能性もあります。と言うのも、ソフトバンクは端末種別ごとにSIMカードが分かれており、それが一致しないと利用ができません。iOS向け、Android向け、フィーチャーフォン向けなど、各種SIMカードがあるということです。

 ソフトバンクのSIMロックがかかったiPhoneでも読み込めるということは、端末側の仕様が変わらない限り、iOS向けのSIMカードが日本通信側に提供されることとイコールでしょう。そのため、SIMフリー端末では利用できる可能性はある一方で、ソフトバンクのSIMロックがかかったAndroidでは使えないおそれがあります。この点は、注意しておくようにしましょう。

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日本通信のプレスリリースには、iPhone、iPad向けとうたわれている

なぜソフトバンクSIMの提供がここまで遅れたのか

 そもそも、日本通信はソフトバンクのSIMカードを、もっと早くから提供しているはずでした。日本通信によると、2016年6月にはネットワーク機器側の相互接続が終わっており、7月頭にはサービスを開始する予定だったといいます。

 この時点で日本通信側に納品されたSIMカードで、ソフトバンクのSIMロックがかかったiPhone、iPadが使えなかったのが、提供が遅れた原因になります。現在、飛騨ケーブルネットワークが「Hitスマホ」の名称でMVNOサービスを開始していますが、こちらもネットワークにはソフトバンクを使っています。

 ただし、このSIMカードでは、ソフトバンクのSIMロックがかかった端末を使えません。SIMフリーのスマートフォンを購入するか、ソフトバンクの端末の場合はSIMロックを解除しなければならなかったのです。技術的には、MVNOに提供するための専用のSIMカードを発行していたと見ていいでしょう。auもVoLTE対応のSIMカードで同様の制限をかけていますが、これと同じ手法と言えます。
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当初納品されたSIMは、SIMフリーかSIMロック解除済み端末でしか使えなかったという

 日本通信はこの対応に納得がいかず、サービスの提供を延期して、交渉を続けていました。一方でソフトバンクは、ネットワーク自体は貸し出していると主張し、話は平行線をたどっていました。業を煮やした日本通信は、これを協議の打ち切りと判断して、総務省に相互接続協議の再開命令を求め、申し立てを行いました。

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9月29日に日本通信が発表したプレスリリース

 総務省の紛争処理委員会で双方の主張を検討した結果、1月27日は総務大臣への答申が行われました。その内容を見ると、日本通信の全面勝利といったところです。この結果を踏まえ、ソフトバンクと日本通信は再び交渉のテーブルにつき、1月31日は相互接続協定を結びました。2月1日の発表はこれを受けたものです。一言で言えば、SIMカードの仕様の違いで、日本通信のサービスインは、半年以上遅れてしまったというわけです。

 ともあれ、これでソフトバンクの格安SIMがついに登場することとなりました。協議の結果、SIMロックが解除できない過去のソフトバンク版iPhone、iPadでも使えるようになったため、これらの端末を持っているユーザーにとっては、端末そのままで料金を下げるという新たな選択肢が生まれそうです。