9.7インチの「iPad Pro」には、Apple SIMが内蔵されています。SIMカードスロットとは別に、もう1枚SIMカードが埋め込まれているようなイメージをすれば、理解しやすいでしょう。Apple SIMとは、中身を書き換えられるSIMカードのこと。海外に渡航した際などには、現地のキャリアと直接契約でき、国際ローミングに頼らず、安価な料金で利用できるのがメリットです。

 Apple SIMが内蔵されているのは9.7インチ版iPad Proだけですが、12.9インチ版のiPad Proや「iPad Air 2」、iPad mini 4にも機能自体は搭載されており、アップルで購入したSIMカードを挿すだけで使うことができます。このApple SIMを、CESで米・ラスベガスを取材した際に使ってみました。ここでは、その料金や使用感などをお届けします。

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設定メニューで「新規プランを追加」を選ぶだけと手軽

 米国に着き、ホテルにチェックインしたあと、まずはiPadを起動してみました。このiPadには、普段からドコモのSIMカードを挿しているため、国際ローミングで電波をつかみます。ただし、データローミングをオフにしているため、通信はできません。そこで、「設定」を開きます。


「設定」→「モバイルデータ通信」で「新規プランを追加」をタップ

 使用しているのが9.7インチ版iPad Proのため、Apple SIMの項目が表示されています。ここでは、「新規プランを追加」をタップします。すると、しばらくの間、iPadが通信を行ったあとで、「モバイルデータ通信アカウント」という画面が表示されました。ここでは、AT&TやSprint、T-Mobileなど、米国のキャリアが表示されます。ここでは、契約したいキャリアをタップします。

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対応キャリアが表示された

 今回は、T-Mobileを契約しました。T-MobileはApple SIM向けに、5GBで10ドルという超格安プランを提供しているからです。料金についての詳細は後ほど解説しますが、ここではそのプランを選択します。

 すると、アカウントを作成する画面が表示されました。ここでは名前や住所、メールアドレス、クレジットカード番号などを入力します。住所については米国のものを求められるため、筆者は滞在中のホテルを入力しました。クレジットカードに関しては、日本で発行されたものを利用しています。これらを入力して手続きを進めていくと、アカウントが作成され、ネットワークの表示がT-Mobileに切り替わりました。

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プランを選択し、アカウントを作成

 その後、すぐに通信もできるようになりました。「設定」の「モバイルデータ通信」にはアカウントが表示されており、ここに残りのデータ量と期限が表示されます。より詳細を知りたいときは、「T-Mobileアカウントを管理」をタップすればOK。残りの容量などが詳しく表示されます。

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T-Mobileにつながり、通信が可能になった

 基本的には画面内の指示に従っていくだけで簡単に契約できましたが、最初の「モバイルデータ通信アカウント」を表示するまでに、少々時間がかかったことも付け加えておきます。何度かエラーが出てしまい、通信を始めるまでに30分程度かかりました。米国以外で使ったときも同様のことがありました。SIMカード書き換えの部分が技術的にこなれていないのかもしれません。時間がかかってしまうこともあり、飛行機を降りてすぐに使い始めるのは、難しいかもしれません。移動しているとさらに不安定になるため、個人的には、ホテルなど、落ち着いた場所で試してみることをオススメします。

 日本に戻ってきたら、利用するSIMカードを切り替えるだけ。SIMカードスロット側(ここではドコモ)をタップすれば、すぐに切り替わります。現地SIMカードを買う必要なく、簡単にiPad上で契約が完結するのがApple SIMのメリットと言えるでしょう。

5GBで10ドルは激安、アメリカなら利用価値は高い

 では、5GBで10ドルという料金はどのような水準なのでしょうか。米国だと、これは“激安”と言っていい料金になります。実際、このプランはT-Mobileのプロモーションという位置づけで、他の料金プランを見ると、これよりも高いことが分かります。通常だと、500MBで5ドル、1GBで10ドルで、5GBプランは40ドルもかかります。Apple SIMの利用促進のために、通常の1/4の料金でサービスを提供しているというわけです。しかも、T-MobileはApple SIM向けに200MBの無料プランを用意しており、10ドル5GBのプランと併用できます。実質、10ドルで5.2GBまで使えるのです。

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他のプランと比べて割安であることが分かる

 他社のSIMカードと比較しても、これは割安です。たとえば、米国のNO.2キャリアであるAT&Tは、「GoPhone」と呼ばれるプリペイドプランを提供しています。このタブレット向けの料金が、2GBで25ドル、5GBだと50ドルになります。さらに、SIMカードを購入すると、いわゆる「SIMカード代」が10ドル程度かかるため、さらに割高になります。Apple SIMを内蔵したiPad Proなら、この料金もかからないため、短期滞在のために、わざわざSIMカードを購入する必要もありません。

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一般的なプリペイドの料金プランと比べても割安

 国際ローミングと比べた場合は、どうでしょうか。日本のキャリアの場合、国際ローミングは1日最大2980円というのが一般的です。auは1日980円で契約しているデータプランの容量を使える「世界データ定額」を、ソフトバンクはSprintと接続すると国内にいるときと同料金になる「アメリカ放題」を提供しています。アメリカ放題はキャンペーンで無料のため、お得度は抜群ですが、5GBで10ドルが非常に割安なことが分かるはずです。

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アメリカ放題をのぞく国際ローミングよりも安く、大幅な節約が可能

 一方で、これはあくまで米国での話。Apple SIMが常におトクになるとは限りません。米国のように、その国のキャリアがサービスを直接提供している場合は比較的料金の安いプランがありますが、そうでない国では、「GigSky」や「AlwayOnline」といった、いわゆるローミング専用キャリアを利用します。この料金体系は、国際ローミングをするという仕組み上、現地キャリアと比べるとどうしても割高になります。着いてすぐの通信手段を確保するためには便利かもしれませんが、滞在中のすべての通信をまかないたいのであれば、その国のキャリアのSIMカードを買うことをオススメします。

 このように見ると、使える国は限定されてしまいますが、米国などではおトクで、しかも手軽に使えるのも事実。今のところ一部iPad限定の機能ですが、米国に行くなら、使っておいて損はなさそうです。より手軽に使えて持ち運びやすいiPhoneに、Apple SIMの機能が搭載されることも期待しています。