2016年は、SIMフリースマホにも大きな動きがあった1年でした。きっかけは、総務省が4月に開始したガイドライン。これによって、大手キャリアの“実質0円”が禁止され、その反動もあってSIMフリースマホのシェアが急上昇しました。市場の拡大に伴い、端末の売れ筋にも少しずつ変化の兆しが見えています。

SIMフリー各社がハイエンドスマホを続々と投入

 もっとも大きな変化と言えるのが、発売される端末の種類かもしれません。元々SIMフリースマホでは、3万円を切る廉価なミッドレンジの端末が売れ筋でした。端末の素の価格が見えやすいSIMフリースマホは、ハイエンドだと安くても5万円を超えてしまいます。これが、大手キャリアと比べると割高に見えてしまうというわけです。

 一方で、4月以降は、各社が続々とハイエンドモデルを投入しています。たとえば、ファーウェイはライカとカメラを共同開発したフラッグシップモデルの「P9」を発売。2015年は「P8」の投入を見送っていたことからも、市場が変化している様子がうかがえます。同様にSIMフリースマホメーカーでシェアの高いASUSも、「ZenFone 3」シリーズを発売します。最上位モデルの「ZenFone 3 Deluxe」は供給が追いつかず、一時販売停止になっていたほどです。

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ファーウェイ「P9」(上)と、ASUSの「ZenFone 3 Deluxe」(下)

 FREETELも、ハイエンドモデルの「KIWAMI 2」を12月に発売しました。このモデルは「デカ(10)コア」を搭載したハイエンドモデルで、デザインテイストは同社のミッドレンジモデルである「REI」を踏襲しており、金属のボディを採用しています。このように、SIMフリースマホの大手3社がこぞってハイエンドスマホを投入し、結果が伴ってきているというのは2016年の特徴と言えるでしょう。

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FREETELの「KIWAMI 2」

 また、市場の拡大を受け、その他のメーカーもSIMフリースマホに本腰を入れ始めています。レノボグループのモトローラはその1社。同社は「Moto G4 Plus」で、本格的にSIMフリースマホに取り組み始めました。Moto G4 Plusは、当時日本では初となる3GとLTEのデュアルSIM、デュアルスタンバイ(DSDS)に対応しており、大手キャリアとMVNOを同時に使えると話題を呼びました。当サイトでも、レビューを掲載しています。モトローラは、フラッグシップモデルで「Moto Mods」を装着できる、「Moto Z」やその廉価版である「Moto Z Play」も発売しました。

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DSDSに対応し、話題を集めた「Moto G4 Plus」

 ZTEも、音楽再生機能にこだわった「AXON 7」「AXON 7 mini」を発売しており、海外メーカーのハイエンドスマホがそろい踏みになりました。大手キャリアに端末を供給しているサムスンやLG、ソニーなどはまだSIMフリー市場に本格参入しておらず、キャリア系の端末とSIMフリーでは顔ぶれが異なっているのは日本ならではと言えるかもしれませんが、少なくとも選択肢が豊富になったことは確かです。

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ZTEは「AXON 7」(左)と「AXON 7 mini」(右)を日本で発売

DSDS、VoLTE、キャリアアグリゲーション対応機種も登場

 メーカーではなく機能という切り口で見ると、特に通信の進化が目立った1年だったと感じています。先に挙げた、Moto G4 PlusのDSDSはその1つ。同機種が発売された際はまだ珍しい機能でしたが、その後、ASUSがZenFone 3などでこれに対応。ファーウェイも、「Mate 9」でDSDSを搭載しました。FREETELは、KIWAMI 2でDSDSを利用できます。また、「gooのスマホ」を展開するNTTレゾナントが、DSDSでリーズナブルな価格を実現した「g07(ぐーまるなな)」を発売。もはや、DSDSはSIMフリースマホで、一般的な機能になりつつあります。

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3GとLTEのDSDSが話題を集めた

 au VoLTEに対応した機種が一気に増えたのも、2016年のことです。元々auは、3Gに「CDMA 2000 1x」と呼ばれる規格を採用しており、これが海外では一般的ではありませんでした。そのため、グローバルで発売されているSIMフリースマホを、ほぼそのままの仕様で日本に投入するのが、難しいという事情があります。auのネットワークを利用するMVNOの端末ラインナップが少なかったのは、そのためです。

 一方で、auはVoLTEと呼ばれる、LTE上で音声を送受信する規格も導入しており、これを利用すれば、通信がLTEだけで完結します。LTEはグローバルスタンダードな通信規格で、対応端末も非常に多くなります。ただ、VoLTEはキャリアごとに仕様の違いが大きく、メーカー側が対応するのに時間と労力がかかるという難点がありました。とは言え、これを解決しなければ、au系MVNOの端末が増えません。

 そこで、auのMVNOであるUQ mobileが端末メーカーと交渉。au側にも、ネットワークとの相互接続性を検証する仕組みが整い、ASUSやTCL(alcatel)、ファーウェイなど、複数の海外メーカーがVoLTEに対応しています。ただし、これでもまだドコモ系MVNOで利用できる端末と比べると、ラインナップが少ないのは事実。ファーウェイのように、あえてチップセットをSnapdragonに変更するメーカーもあり、本格的にラインナップがそろうには、もう少し時間がかかるかもしれません。チップの対応やau系MVNOのさらなる市場拡大も、必要になりそうです。

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VoLTE対応機種が一気に拡大した

 通信機能の進化という点では、キャリアアグリゲーションに対応したSIMフリースマホが急増したのも、2016年のこと。こちらに関しては、回線を貸し出すキャリア側の事情もあり、対応が遅れていましたが、ファーウェイのP9を皮切りに、ハイエンドモデルが一気に対応を開始しました。キャリアアグリゲーションとは、2つ以上の周波数を束ねて通信を高速化する技術のこと。道路の道幅を足すと広くなることをイメージすれば、仕組みも理解しやすいかもしれません。これによって、最大の通信速度が上がり、より快適に利用できるようになりました。
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キャリアアグリゲーション対応も本格化

スマホ以外の端末も登場

 SIMフリーは、スマホだけのものではありません。市場の幅が広がり、ニーズも多様化したことで、“ガラホ”とも呼ばれる折りたたみ型のケータイが登場しました。シャープの「AQUOSケータイ」が、それです。

 この機種は、外観こそ折りたたみ型のケータイそのものですが、中身はカスタマイズされたAndroid。タッチパネルを搭載していないため、Google Playなどのサービスには非対応ですが、テザリングなど、一部の機能はスマホライクに使うことがことが可能になっています。電話やメールだけを、ケータイ風に使いたい人には打ってつけの機種と言えるでしょう。

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シャープの「AQUOSケータイ」

 また、FREETELは、2つ折りのスマホ「MUSASHI」を発売しました。こちらは、シャープのAQUOSケータイとは異なり、Androidの機能をフルに利用できます。タッチパネルも搭載しており、スマホとしても、折りたたみケータイとしても利用できるのが特徴です。ほかにも、FREETELは独自OSで開発した「Simple」の後継機を開発していることを明かしています。

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2画面折りたたみスマホの「MUSASHI」

 3万円を切るミッドレンジからローエンドのスマホが中心だった以前と比べ、2016年は“SIMフリーの幅”が大きく広がりました。よりハイエンドなモデルが増え、対応機能も充実し始めています。折りたたみ型のケータイが出たのも、ニーズが多様化しているからこそと言えるでしょう。SIMフリー端末が豊作だった2016年ですが、MVNOの市場は現在も継続して拡大しています。この傾向が続けば、来年はさらにおもしろい1年になるかもしれません。