2016年も残すところあとわずか。「格安スマホ」ブームの勢いはまだまだ健在で、今年もMVNOにはさまざまな動きがありました。ここでは、そんな業界のトレンドを振り返りつつ、注目のトピックを解説していきます。今回はMVNO編ということで、キャリアの動きや料金を中心にピックアップしていきました。

端末込みの料金プランが大手に広がる

 競争が行きつくところまできた結果、料金そのものや使えるデータ容量には大きな変化がなかった1年ですが、代わりに“買い方”にはさまざまな提案がありました。特に目立っていたのが、「セットプラン」です。

 これまでのMVNOは、端末とSIMカードを別々に買うのが一般的でした。とは言え、端末と回線はセットになって初めて使えるもの。ユーザーにとっても、まとめて入手できた方が、手間が減ることになります。ある意味大手キャリアに近い販売方法ですが、ここに挑戦するMVNOが複数社出てきたのは2016年の特徴と言えるでしょう。

 たとえば、KDDI傘下のUQ mobileは、月額1980円からの「ぴったりプラン」を開始。割賦販売と同時に「マンスリー割」と呼ばれる月々の割引も導入しました。これによって、選ぶ端末によっては実質0円に近い価格で購入することが可能になりました。UQ mobileの料金にはデータ通信だけでなく、無料通話も含まれており、すべてがコミコミになっています。端末さえ選べば、オプションなど複雑なことを考える必要がないというわけです。

PA240154
2月からは「おしゃべりプランS」に名称が改定される

 そんなUQ mobileに対し、楽天モバイルも「コミコミプラン」で対抗。こちらは端末によって料金が異なりますが、やはり音声定額とデータ通信がセットになっており、それぞれをバラバラに入手するよりもおトクになっています。コミコミプランは一部機種限定ですが、楽天モバイルによるとその割合も増えているといい、対象機種も拡大中です。

PA270137
楽天モバイルは端末代まで含めた「コミコミプラン」を導入、対象端末も拡大中

 これに対し、FREETELが始めた「スマートコミコミ」は、セット料金が提供されているだけでなく、半年に1回端末の交換ができるのが特徴になります。端末はFREETELブランドのものだけでなく、今後はASUSやファーウェイなども加わるといい、画面割れの際も1年経っていれば無料で新機種に機種変更できます。

PB210276

PB210268
FREETELは「スマートコミコミ」を発表。端末を半年ごとに切り替える「とりかえ~る」も用意

 セットになっているぶん、見た目の金額はこれまでのMVNOの料金よりやや高めになりますが、1カ所でまとめて購入できたり、トータルで料金を安く抑えられたリというのがこれらのプランのメリット。端末と回線を別々に購入し、最適なプランを選べる人には必要がないかもしれませんが、一方でMVNOのユーザー層は多様化しています。セットプランは、こうしたニーズを捉えたものと言えるかもしれません。

イオンモバイル、LINEモバイルなど大型の新規参入も

 イオンやLINEといった“異業種”の参入も相次いだ1年でした。NTTコミュニケーションズやIIJ、BIGLOBEなど、これまではどちらかと言えば通信を本業にしてきた企業が多かった印象もありますが、イオンやLINEはこれらの企業とはユーザーの基盤が異なります。これまでもMVNOが獲得できなかったユーザーにアプローチできる可能性があり、期待も集めています。

 イオンは元々、IIJやBIGLOBEなど、MVNOのSIMカードと端末をセットにして販売を行ってきました。「格安スマホ」という言葉も、イオンがMVNOのSIMカードとSIMフリースマホを取り扱うようになって生まれたものです。そのイオンは2月に、イオンモバイルとして自らがMVNOになりました。イオンといえば、やはり全国に張り巡らされたイオンモールなどの販路に強みがあり、これを生かしてサポートも充実させました。いち早く大容量プランを導入するなど、料金プランにも特徴があります。

P7250010
大容量プランをいち早く導入したイオンモバイル

 これに対し、LINEは「カウントフリー」と呼ばれるサービスを導入しました。これは特定のアプリやサービスを使った際の通信量を、文字通りカウントしないこと。LINEが提供するMVNOなだけに、LINEはすべて無料で使えるようにしたというわけです。さらに、TwitterやFacebookと提携することで、3GB以上のプランでは、これらのサービスもカウントフリーの対象になりました。今ではInstagramもカウントフリーに含まれています。

P3240388

P3240399
LINEもMVNOに参入した。カウントフリーが特徴

 カウントフリーに関しては、一部のMVNOが積極的に取り組んでいます。LINE MOBILEのほかには、FREETELがLINEやWeChatなどのメッセージアプリや、App Storeの通信量を無料にしており、フリービットのMVNOであるDTIも、ポケモンGoの通信量がカウントされないSIMカードを販売しています。一方で、以前本ブログでも書いたように、カウントフリーの提供にあたっては企業側にハードルがあることも事実で、物議をかもした1年でもありました。

PB210242
FREETELも、カウントフリーを導入済み

 MVNOというわけではありませんが、IIJが日本郵便の一部局でSIMフリー端末とSIMカードの販売を開始するといったニュースもありました。その意味で、2016年はMVNOの存在がもっと身近になった1年でした。

加入者管理機能(HSS/HLR)がついにMVNOに開放へ

 実際にサービスが開始されるのは2017年になってからですが、2016年にはHSS/HLRと呼ばれる加入者管理機能の開放が、ついに決定しました。ドコモとIIJがこれに合意しています。P1190029
HSS/HLRは総務省にも開放を促進すべき機能と位置付けられていた

 加入者管理機能とは、ユーザーの“位置”を登録するネットワーク上のサーバーなどのこと。ユーザーがどの基地局、交換機につながっているかを管理するためのもので、これによってユーザーに通信を提供することができます。加入者管理機能はもともと、大手キャリアだけが持っていましたが、これをMVNOに開放することになりました。

P1190035
ユーザーの位置を管理するデータベースのこと

 MVNOが加入者を管理できるということは、裏を返せば、独自のSIMカードが必要になるということでもあります。IIJもSIMカードの発行を予定しており、まずは法人向けにサービスを提供する予定です。

 独自のSIMカードといっても、物理的なカードである必要はなく、Apple SIMのように、ソフトウェアで書き換え可能なものもあります。これによって、日本にいるときはIIJの、海外に行くときは現地キャリアの情報を書き込むようなサービスも可能になります。将来的には、法人向けだけでなく、個人向けサービスも期待できるかもしれません。

 このように加入者管理機能やSIMカードまで、一式自前で持つMVNOのことを、海外では「フルMVNO」と呼びます。日本ではSIMカードを大手キャリアから借りる「ライトMVNO」しかなく、これによってMVNOの取れる戦略にも限界が生じていました。加入者管理機能を持つには多額の投資が必要になり、技術力も求められるため、運用できる会社は限られてきますが、MVNOのビジネスモデルにとって大きな転換点であることも確かです。後から振り返ると、2016年は、フルMVNO誕生のきっかけが作られた1年だったということになりそうです。