SIMフリーのスマホにも、「キャリアアグリゲーション」に対応するものが徐々に増えています。たとえば、ファーウェイの「P9」や、ASUSの「ZenFone 3」などがそれに当たります。では、このキャリアアグリゲーションが使えると、どのようなメリットがあるのでしょうか。今回は、その基本から解説していきます。

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2つ以上の周波数を足し合わせて通信速度をアップさせる

 キャリアアグリゲーションはシンプルな技術で、2つ以上の伝送者(キャリア)を組み合わせる(アグリゲーション)ことを指します。スマートフォンで情報を伝えるものは、まさに電波のこと。2つ以上の電波を足すのが、キャリアアグリゲーションというわけです。

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2つの周波数を組み合わせて速度が上がる、シンプルな技術

 では、2つ以上の電波とは具体的に何を指すのかというと、それぞれの周波数ということになります。携帯電話の通信には、さまざまな周波数が用いられており、上で挙げたP9であれば、スペック上はLTEだけで、「B1/2/3/4/5/7/8/12/17/19/20/26/28/38/39/40」に対応しています。通常は、このうちの1つを使って通信しますが、キャリアアグリゲーションでは、2つを同時に利用します。

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P9のスペック表には、キャリアアグリゲーションで使える周波数の記載もある

 一番のメリットは、やはり速度が上がるところ。たとえば、ドコモの場合、Band 1(2GHz帯)は下り最大112.5Mbps、Band 3(1.8GHz帯)は下り最大150Mbpsの速度がそれぞれ出ますが、2つを足し合わせると、その速度が262.5Mbpsまで上がることになります。

 もちろん、262.5Mbpsというのは理論上の最大値で、実際にここまで速度が出るわけではありませんが、キャパシティが大きくなれば、それだけ実測値にもプラスの影響が出ます。次に実験として、キャリアグリゲーションの有無でどれだけ速度が変わるのかを、試してみましょう。

対応、非対応の違いでしっかりと速度に差も出る

 速度差の測定は、2つの機種を使って行いました。いずれも、同じドコモのSIMカードを使用しています。1つが、キャリアアグリゲーション対応のGalaxy S7 edgeで、この機種は3波のキャリアアグリゲーションに対応しています。先ほど挙げたのは2つの周波数を組み合わせる例ですが、現状発売されている機種の一部は、最大で3つまで同時に利用でき、さらなる高速化が図れます。

 もう1機種がZenFone 5で、こちらは残念ながらキャリアアグリゲーションには非対応になります。そのため、最大の速度は、ドコモのBand 3につながっている場合で、下り150Mbpsとなります。Galaxy S7 edgeの最大速度が、下り375Mbpsのため、実に2倍以上のスペック差があります。この違いが、実測値にはどう反映されるのでしょうか。

 

 まずは、Galaxy S7 edgeを見てみましょう。速度測定は東京都内の渋谷区で行っています。条件を合わせるため、時間帯もまったく同じにして、同時に速度を「Speedtest.net」というアプリで測りました。その結果が、以下のスクリーンショットになり、66.14Mbps出ていることが分かります。

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 対するZenFone 5は、28.77Mbps。決して遅いわけではありませんが、キャリアアグリゲーション対応のGalaxy S7 edgeほどの速度は出ていません。ちなみに、Galaxy S7 edgeはテストモードで確認したところ、Band 1とBand 3のキャリアアグリゲーションを行っていました。最高速度ほどの開きはありませんが、対応していた方が、確実にスピードが速くなることが分かります。

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キャリアアグリゲーションの最高速度は?

 キャリアアグリゲーションの最高速度は、キャリアの持っている周波数や、掛け合わせる周波数に依存します。MVNOの場合、その多くがネットワークを借りるドコモは、先に述べたように、3つの周波数を使い、下り最大375Mbpsを実現しています。これは、Band 1、Band 3、Band 19(800MHz帯)の3つを合計した際に出る数値です。

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3つの周波数を使う場合は、最大375Mbps

 ドコモの場合、スマホ用の主な周波数は次の4つ。Band 1が最大112.5Mbps、Band 3が最大150Mbps、Band 19が112.5Mbps、Band 21が112.5Mbspで、この組み合わせによって、キャリアアグリゲーションの速度が決まります。

 たとえば、Band 1とBand 3を組み合わせたときは262.5Mbps、Band 1とBand 19では、225Mbpsになります。ほかにも、Band 1と21、Band 3と19、Band 19と21などの組み合わせがあり、これによって最大速度が変わってきます。細かな話をすると、 Band 19は場所によってはまだ75Mbpsのところもあり、どこで通信するかによっても最大速度の差が出てきます。

  最大速度
Band 1 112.5Mbps  
Band 3 150Mbps 東名阪中心
Band 19 112.5Mbps 75Mbpsの場所もあり
Band 21 112.5Mbps 都市部中心

 SIMフリースマホでも、その恩恵を受けることができます。ただし、この記事で実験したように、明確な速度差が出るかどうかは使っているSIMカード次第なところもあります。いくら最大速度が速いとはいえ、MVNO側の混雑によって上限が抑えられてしまえば、その差は小さくなるからです。

 特にお昼時など、ネットワークが混雑しがちな時間帯は、借りている帯域に限界のあるMVNOだと、速度が遅くなりがち。このようなときは、無線部分とは関係なくバックボーンで速度が出ないため、キャリアアグリゲーションが使えても、効果は薄いでしょう。

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キャリアアグリゲーション以外の部分がボトルネックになることも

 逆に、空いている時間帯であれば、仮に無線部分が一部混雑している場所でも、快適に通信できる可能性はあります。キャリアアグリゲーションになれば速度が必ず上がるわけではなく、決して万能ではありません。とは言え、差が出ることがあるのも事実。端末を選ぶ際に、対応の有無はチェックしておいた方がよさそうです。